紅茶は英語でBlack Tea?~お茶の名前と水色について~
お茶を海外の方に紹介するときに、ふと気になったことがありました。
それは紅茶を英語で呼ぶときに、「Black Tea」、つまり「黒」で表現されていることでした。
なぜ、「Red Tea」ではないのでしょうか。
世界には様々な種類のお茶が存在し、「茶葉」「水色」「お茶の名称」それぞれに多種多様な色が存在しています。
紅茶の例のように国を跨ぐとそのお茶の名称に使われる「色」 は異なってくることが分かります。
調べてみると、そのお茶の名前にその色を使うの?と思うこともしばしば。
今回はそんなお茶の名称に使われる「色」についてお話したいと思います。

なぜ紅茶なのにBlack Tea?
まずは先の例に出した紅茶についてですが、英語圏では「淹れたお茶の色」ではなく「茶葉の色」を基準にしていると言われています。
紅茶を淹れると、水色は赤みを帯びた色合いになります。
それでも「Red Tea」ではなく「Black Tea」と呼ばれるのは、発酵によって黒く変化した茶葉そのものの色に由来しているからだそうです。
英語圏でのお茶の分類はとてもシンプルで、非発酵茶を「Green tea」、完全発酵茶を「Black tea」と呼んでいるとのことでした。確かに、非発酵茶の茶葉は緑色に見えますし、完全発酵茶は黒っぽいものが多いですよね。
ちなみに、同じ紅茶でも、淹れたときの水色が日本と英国で違って見えることがあります。
紅茶は、淹れる際に使う水の「硬度」が高いと、水色がやや暗く、黒っぽく見えやすくなります
英国では、硬度の高い「硬水」が使われることが多く、一方、日本で一般的に飲まれているのは「軟水」です。
そのため、同じ紅茶の茶葉でも、日本では赤みがかった透明感のある水色に仕上がりやすくなります。
これも英国では「Black tea」に違和感のない理由かもしれませんね。
「黒茶」は中国では紅茶とは別のお茶
一方、中国では「黒のお茶」「黒茶」と呼ばれているのは紅茶ではなく、「後発酵茶」と呼ばれるお茶です。
後発酵茶とは、乳酸菌やカビなどの微生物の力で発酵させるお茶のことです。
代表的なものにプーアル茶などがあります。
では、なぜこれらのお茶が「黒」と呼ばれているのでしょうか。
調べてみると、中国茶も発酵の度合いによって「色」を呼び分けて分類されていることが分かりました。
ただし、その色の考え方は英語圏とは異なり、さらに細分化されているようです。
不発酵茶を「緑茶」、それよりの少し発酵させた弱発酵茶を「白茶」、さらに発酵が進んだ半発酵茶を「青茶」、完全発酵茶を「紅茶」、そして、そこからさらに微生物の力で発酵させた「黒茶」といったように、発酵の度合いごとに色の名前が使われています。
例えば、ウーロン茶は半発酵茶なので「青茶」に当たるのですが、飲み物としてのウーロン茶の色には全然「青さ」を感じませんね。
ここにも、お茶の名称に使われる「色」が、必ずしも見た目そのものを表しているわけではない、という面白さを感じます。

「石鎚黒茶」は黄金色
1899でも、以前提供していた後発酵茶に「石鎚黒茶」というお茶がありました。
このお茶は、実際に提供されたときの水色を見て、驚かれることの多いお茶でした。
というのも、「黒茶」という名前や紹介文から想像される、濃く暗い色合いとは異なり、
石鎚黒茶は、思いのほか明るく、透明感のある黄金色の水色をしているからです。
石鎚黒茶は、愛媛県・石鎚山麓に伝わる、日本でも希少な後発酵茶です。
糸状菌と乳酸菌による「二段発酵」という、独特の製法が特徴として知られています。
通常丸まって棒状になっている緑茶の茶葉と違い、元の葉っぱの形の残る黒い茶葉をしているのも、このお茶ならでは。
温かく淹れるとすっきりとした味わいに、冷やすとさっぱりとした酸味と独特の香りが特徴のお茶です。
こうした背景や「黒茶」という名前から想像して注文すると、
実際に目の前に出てくる水色との違いに、驚かれるお客様も少なくありません。
私自身も、初めて石鎚黒茶を淹れたとき、
あの黒い茶葉から、こんなにも澄んだ美しい水色のお茶が生まれるとは思わず、強く印象に残ったことを覚えています。
お茶の色は
お茶の名前に使われている「色」は、淹れた後の水色ではなく、分類を表すことが多いようです。
「黒」と聞くと、どうしても黒い色のお茶を想像してしまいますよね。
でも、紅茶やプーアル茶、石鎚黒茶を見てみると、その名前の色から連想されるイメージからは良い意味で裏切られます。
お茶の名前は、水色をそのまま表したものではなく、「どんなお茶か」を伝えるための言葉。
名前と見た目の違いに気づくことは、お茶を学ぶ最初の一歩なのかもしれませんね。
そう思ってお茶を眺めてみると、いつもの一杯が少し面白く感じられるのではないでしょうか。



