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【BLOG】和の色彩「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」 〜卓越した江戸人の感覚〜

2019/07/10 ゆるやかな時間の話 太田菜穂子

【BLOG】和の色彩「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」 〜卓越した江戸人の感覚〜

ある雨の朝に思ったこと。

若いころは梅雨の時期が鬱陶しくて、灼熱の太陽を指おり数えて待ちわびていたものですが、歳を重ねていくうちに、軒下に垂れる雨の雫に宝石の輝きを重ね、大きな雫になると弾き散る水の儚さに時間も忘れて一人戯れる愉しい季節になりました。 

雨の中を散策すると咲き頃の紫陽花(あじさい)や花菖蒲(はなしょうぶ)、芍薬(しゃくやく)水芭蕉(みずばしょう)の美しく織りなす色彩に見入ってしまいます。

日本の四季はそれぞれ季節の色とともにあるのだと感じています。

私の愛読書に人間国宝で染織家の志村ふくみ先生が書かれた「一色一生」(講談社出版)という一冊があるのですが、私はこの人生の指南書を肌身はなさずずっと大切にしています。

とくに先生の藍に対する愛情は人並みではないと思うのですが、先生曰く、人は自然とともにあるということ、それに抗うことなく私たちの暮らしを傾けてみれば自然が教えてくれることがどれほど大きいかを学べるというのです。言うは易し、行うは難しですけれど。。。

この書は、染織家ならではの視点で色彩を語り、果てはそれがゲーテやシュタイナーといった哲学的な色彩学や科学まで及ぶのですが、決して堅苦しい教書にはならずに先生らしいとても優しいおだやかな語り口で私たちの身近な暮らしに沿って教えてくれます。素晴らしい書ですから、興味がある方はぜひ一度お読みになってみてください。

あらあら・・・書籍の売り込みを意図したわけではなかったのですが、話が少しそれました。

さて、本題「四十八茶百鼠」という色について。

「お茶」というものがより身近になっているせいか、すぐにこの色名が目に入り込んできました。読みは「しじゅうはっちゃひゃくねずみ」とあります。

一体、この色名はどのような色なのでしょう。

ウェブサイトで調べると、四十八や百は色数ではなく、多色という意味だそうですが、茶系統も鼠系統も実際には百以上の色名があるらしく、言葉の語呂遊びでこのように呼ばれるようになったともあるのですが、日本人の卓越した繊細微妙な感覚は本当に素晴らしいものです。

この色彩の代表的な色は「茶」「鼠」「藍」のカラーバリエーションだそうです。茶系の名前には江戸茶、芝翫茶(しかんちゃ)、利休茶(りきゅうちゃ)といったものがあり、鼠系にも江戸鼠をはじめ、銀鼠(ぎんねずみ)、梅鼠(うめねずみ)、葡萄鼠(ぶどうねずみ)などは少し想像できますね。

藍系の名前にはとても美しい音色があります。薄藍(うすあい)、浅葱(あさぎ)、水浅葱(みずあさぎ)などです。

これらの色は決して華やかな色合いではないですが、この色名が生まれたころの江戸時代の後期は町人や商人の生活が徐々に豊かになり、着るものの素材や色にも変化が出てきて、人々はきれいな色を着たいと思うようになったそうです。

ですがその時代は庶民の贅沢はまだご法度とされていました。

人々は試行錯誤で微妙な色調をこさえて密かにおしゃれを楽しんだようです。

色が人々の暮らしや世の中の流れと関わっていたことをここでも知ることができてとても興味深いです。 

和の色彩は、西洋のそれとはやはり違うのでしょうか。

日本人は、卓越した繊細な感覚をもっているといいますが、色合いは気候によって多様なものでしょうが、色名においては和の色名に負けてはいないようです。例えば、茶葉の緑色について少しご紹介しましょう。

私の書棚にある「日本の色・世界の色」(ナツメ社出版)に掲載されている緑系の和と世界の色名を見てみても、それなりにとても素敵な音色を奏でている名前があります。  私たちに馴染みのある色名といえば、オリーブグリーン、モスグリーン、エメラルドグリーン、ライムイエローもグリーン系の色に入っていました。

様々な色の名前を知りながら雨の日に楽しめる一冊。(ナツメ社出版)

様々な色の名前を知りながら雨の日に楽しめる一冊。(ナツメ社出版)

人間の肉眼で想像を超える色の数をみることができるのを思うと

よりその感覚を研ぎ澄ましておきたいと思うようになりました。

梅雨の朝、そんなことを感じながら、四季変わることなく淹れる朝茶を味わっています。

もうすぐ梅雨があければ、薄い抹茶を冷やしていただくのも夏ならではの楽しみです。 

この時期、レストラン1899お茶の水、デリ&バル1899東京 でも私たちの茶バリエが厳選した美味しい冷茶をご用意していますので、様々な緑を想像しながらぜひご賞味ください。

一期一会