愛媛で石鎚黒茶づくりに参加したら、最高に夏だった
季節はすっかり秋ですが、ちょっと今日は季節をさかのぼり、夏の話です。
海にプール、花火、キャンプ、BBQ。
夏の風物詩はいろいろありますが、インドア派の自分にとってどれもあまり縁のないもの。
毎年、室内でひっそり夏をやり過ごしているのですが・・・
今年の夏はちょっと違いました。
石鎚黒茶の生産をお手伝いしに行った、愛媛・西条での2日間が最高に“夏”だったのです。
石鎚黒茶がどのように作られているのかを知るだけでなく、作り手である「さつき会」の皆さんと一緒に汗を流し、石鎚黒茶づくりの現場に触れることができた、忘れられない2日間になりました。
今回は、そのときの様子をご紹介します。
石鎚黒茶とは?
改めて、「石鎚黒茶」とは何かご存知ですか?
読み方は「いしづちくろちゃ」。
石鎚黒茶は、愛媛県・西条の地で江戸時代から作られてきた後発酵茶です。
二段発酵させることによって、独自の深い香りと品のある酸味が生まれます。
茶葉は真っ黒で、水色は黄金色。

一般的な煎茶とはずいぶんと様子が違うのがわかるかと思います。
そんな石鎚黒茶の大きな特徴のひとつが、その希少性。
現在、石鎚黒茶を作っているのは、西条市内でもごく限られた生産者のみ。
製造は、全て昔ながらの手作業で行われます。
おもに7月から8月にかけて作られ、茶葉を刈り取るところから、洗浄、蒸し、発酵、乾燥、選別まで、さまざまな工程を経て完成します。
その伝統的な製造技術は、2023年3月22日、「石鎚黒茶の製造技術」として国の重要無形民俗文化財に指定されました。
そんな石鎚黒茶を作り続けている生産グループのひとつが、「さつき会」さんです。
1899はこの数年、有志メンバーがボランティアとして現地に赴き、お茶づくりのお手伝いをしています。
今年は、そこに初めて私も参加することになり、7月末に愛媛へ向かいました。
さつき会の作業場へ
松山空港から、さつき会さんの作業場のある西条市までは、車で小一時間。
作業場からは、きれいに石鎚山が見えます。

ここから丸2日間、さつき会の皆さんに混ざって作業を体験します。
石鎚黒茶は、発酵に数日から数週間をかけて作られるお茶です。
今回は、製造途中のさまざまな茶葉に触れながら、それぞれの工程を体験させていただきました。
実際に体験した順番とは少し異なりますが、ここでは石鎚黒茶ができるまでの工程に沿ってご紹介していきます。
①刈り取り
石鎚黒茶の製造作業は、お茶の木を刈り取るところから始まります。
集合時間は朝6時。山の中にある茶畑に集合したら、さっそく作業開始です。

茶畑と言っても、無肥料・無農薬で自然の中でのびのびと2~3年かけて大きく育ったお茶の木。一般的なお茶どころで見るような整然とした茶畑とは少し印象が違います。
収穫の仕方も異なります。
新しく伸びた部分を摘み取る一般的な茶摘みとは異なり、大きく育ったお茶の木を、鋏を使って根元から刈っていきます。


さつき会のみなさんに混ざって、CHACHACHAブログではおなじみ・1899の坂上も頑張っています。

この日の最高気温は35℃。
日頃夜型の生活をしているため「6時集合は早いなぁ~」などとこっそり思っていたのですが、日が昇ってくるととにかく暑い!日差しも強い!
もっと早くから始めても良いくらいだなと一瞬で考えを改めました。
そして、無農薬なので虫も元気。
気にしていると作業にならないので、虫を意識から消して無心で作業に集中します。
刈り取ったお茶の木は、紐で束ねてトラックへ。
休憩と水分補給をはさみながら、2時間半ほど作業をして、ひとまずこの日の刈り取り目標を達成。

シートに隠れていますが、トラックの荷台にお茶の木が山盛りです。
ちなみに、全工程の中で私はこの作業が一番大変でした…!
しかし、坂上は一番好きなのだそう。茶畑が刈り取られていって、跡地になっていくという達成感が良いのだとか。好みは人それぞれですね。
それにしても、この作業を手際よく進めていくさつき会の皆さん。
体力と、長年この仕事を続けてきたからこその手際の良さに思わず見入ってしまいました。
②小枝を切り離す
刈り取ったお茶の木を作業場に運んだら、再び鋏の出番です。
枝を小枝ごとに切り離していきます。

枝の山をみんなで取り囲みながら、パチン、パチンとカットしていきます。
お茶の木の実や、葉のない枝だけの部分はここで分けて取り除きます。
最初はあまりの山の大きさにびっくりしましたが、パチパチと聞こえてくる音が小気味いい。日陰に吹いてくる風も気持ちよく、気付けば作業が進んで、山が少しずつ小さくなっていきます。


途中、休憩でいただいたのは、さつき会の皆さん手作りの焼酎漬けの梅干し。
これが最高で、思わずおかわりまでいただいてしまいました。

作業はハードですが、こうした休憩時間も含めて、皆さんと一緒に作業する時間が楽しく、まだまだ頑張れそうな気持ちに。
③洗う
切り離した小枝は、流水で何度もざぶざぶ洗います。
西条市は、石鎚山系を源流とする清らかな水に恵まれた地域。
市内には、地下から湧き出す自噴井「うちぬき」が点在し、名水百選にも選ばれています。

④蒸す
洗ったお茶の木は、寸胴鍋を改造して作られたという、特製蒸し器へ。
1時間30分ほどかけて、じっくりと蒸していきます。

茶葉の量がとにかく多いので、蒸し器は3台が常時フル稼働。次々に蒸していきます。
画像だとわかりにくいですが、鍋の下の部分で火がたかれています。
時間とともに蓋からはみ出していた茶葉が鍋に収まっていきます。

休憩
蒸し時間を待ちながら、お昼休憩です。
さつき会の皆さんが用意してくださったのは、隠し味がたっぷり入ったカレーライス。
茶飯にたっぷりかけて、シャキシャキのラッキョウやキュウリと一緒にいただきます。

まろやかで具だくさん。
夏の風にあたりながら、みんなで食べるカレーがおいしすぎる…
こういう時間も、現地に来たからこそ味わえるものですね。

⑤箱に詰めて一次発酵へ
そうこうしているうちに、茶葉が蒸しあがります。
鍋から出して、あっつあつの茶葉を広げて、枝や実をひとつひとつ手で取り除いていきます。


しっかり蒸せていると、枝から葉がぽろぽろと気持ちよく外れます。
葉だけを残して、枝はここでお別れ。
熱い作業ですが、みんなで台を囲んで作業していると、なんだか共同作業をしている感じがして楽しい。
そして、茶葉からはいい香りが漂ってきます。

枝をしっかり取り除けたら、木箱に詰めて煮汁をかけて蓋をします。

この木箱を、石鎚山の山間部の小屋で4~5日おいて発酵させます。
これが石鎚黒茶の「一次発酵」です。

茶葉は一度にすべて仕込めるわけではありません。
蒸して、枝を取り、箱に詰める。
この作業を何度も何度も繰り返していきます。
⑥茶葉を揉んで、二次発酵へ
4~5日経った茶葉を、木箱から取り出すと…

白や黄色のカビがしっかりと付いています。
ふわっと湯気がでて、触ると茶葉はホカホカ。

ここから、茶葉を揉んでいきます。
使うのは、なんと木製の洗濯板。

茶葉の表面に傷をつけることで、このあとの工程で発酵が進みやすくなるのだそうです。

しっかりと揉んだ茶葉は、袋に入れ、清潔なビニール袋をはいた足で空気を逃がしながら、きっちりと詰め込んでいきます。

そして、空気を遮断した「嫌気発酵」へ。
これが石鎚黒茶の「二次発酵」です。
⑦乾燥させる
こうして2週間ほど経って、二次発酵を終えた茶葉がこちら。

お漬物のような状態になっています。
ここから、茶葉を広げて乾燥させていきます。
重なった茶葉をばらし、混じっている小枝をもう一度取り除きます。
みなさんお話しながらも、とっても作業が早い。

きれいに広げたら、日当たりの良い場所で乾燥させます。

まんべんなく乾くよう、途中で上下をひっくり返します。


裏面もしっかりと太陽にあてたら、最後の乾燥へ。

カンカン照りの太陽のもと、茶葉が少しずつ黒く乾いていきます。
⑧完成
こうして仕上がった石鎚黒茶がこちら。

しっかりと乾き、きれいな黒色に仕上がっています。
こちらを大切に袋に入れ、このあと販売用に個包装されるそうです。

こうして、石鎚黒茶の製造工程をひとつひとつ体験することができました。
刈り取りから乾燥まで、どの工程にもたくさんの手作業があります。
実際に一緒に作業してみると、これだけの工程を毎年続けていくことの大変さが、ほんの一部ではありますが分かったように思います。
今年、2026年は、さつき会さんの設立30周年です。
1996年当時、石鎚黒茶の製造者はたった一人だったそうです。
その最後の生産者から製造技法を学び、石鎚黒茶を伝えていくために結成されたのが「さつき会」でした。
そうして受け継がれてきた石鎚黒茶づくりに実際に参加してみると、改めてその歴史の長さや、想いの深さを感じます。
今回はボランティアとして参加させていただきましたが、石鎚黒茶の作り方を教えていただいただけではありません。
作業中の休憩にスイカをいたただいたのですが、見てください、この最高の風景。
これぞ夏。夏休み。

さつき会の皆さんは、代表の戸田久美さんをはじめ、皆さんとても明るく、元気で、あたたかい方々でした。
毎年、ボランティアの方を迎えて作業をされているそうですが、一緒に汗をかいて、休憩には笑いながらお茶を飲んで、また作業に戻る。
そんな時間を過ごしていると、毎年ここに人が集まる理由が、少しだけわかったような気がします。

大切に受け継がれてきた石鎚黒茶と、それを作り続けるさつき会の皆さん。
その両方に触れることができたことは、とても貴重な経験になりました。
まだ石鎚黒茶を味わったことのない方にも、ぜひこのお茶を知って、味わっていただけたらうれしいです。



