蔵出し茶とは?秋に味わう日本茶のおいしさと新茶との違い
だんだんと秋らしい雰囲気になってきました。
むしろ朝と夜は肌寒い日もありますね。
今回は、そんな秋のお茶についてご紹介します。
日本茶の旬と聞くと、春の「新茶」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。でも、春に摘んだお茶をすぐには飲まず、大切に保管して秋に楽しむ「蔵出し茶」があることをご存知ですか。
蔵出し茶とは、一般的に春に摘んだ茶葉を適切な環境で保管し、夏を越して秋頃に仕上げたお茶のこと。新茶とはまた違った、落ち着いた香りやまろやかな味わいを楽しめるのが魅力です。
では、なぜお茶をわざわざ秋まで寝かせるのか。今回は、蔵出し茶と新茶の違いやその歴史、おいしさの秘密をご紹介します。
蔵出し茶とは?
蔵出し茶とは、春に摘まれた茶葉をすぐに仕上げるのではなく、適切な環境で保管し、秋頃に仕上げて販売されるお茶を指します。勘違いされやすい点として、蔵出し茶が「秋に摘んだお茶」という意味ではないことです。もとになるのは、春に収穫された一番茶などです。それを荒茶(生葉の酸化を止めて乾燥させた段階)の状態などで保管し、秋を迎えた頃に火入れなどの仕上げを行います。
春に摘んだばかりのお茶を楽しむ「新茶」に対して、時間を経てから味わうのが「蔵出し茶」です。
同じ春の茶葉でも、楽しむ時期や仕上げ方によって異なる魅力が生まれると言われています。
なかなか聞きなれない名前ですが、皆さん飲んだことはありますか??
冷蔵庫がある現代でも「蔵出し茶」?
ブログを書いている際にメンバーから疑問の声が。
昔のお茶の保存と現代のお茶の保存には大きな違いがあります。
現在は冷蔵・低温貯蔵の技術が発達し、茶葉の品質変化を抑えながら保管することができます。
そのため、現代では春に摘まれた茶葉を低温で保管し、必要な時期に仕上げること自体は特別なことではありません。
では、普通に低温保存されたお茶と、蔵出し茶は何が違うのか??
「蔵出し茶」という言葉には、法律などで統一された厳密な定義はなさそうです。
現在では、春のお茶を夏の間保管し、秋になって仕上げ、その季節ならではのお茶として販売するものなどに「蔵出し茶」という名称が使われています。
昔と現代では保存する設備や技術は変わりました。
それでも「春のお茶を夏の間大切に保管し、秋になって楽しむ」という考え方は残っているのです。
そもそも、なぜ食べ物や飲み物を「寝かせる」のか?
そういえば、以前にどこかで他の飲み物や食べ物で、同じような話を聞いたな。
ということで、少し調べてみました。
私たちは昔から、さまざまな食べ物や飲み物を「寝かせて」きました。
ワインやウイスキー、日本酒、味噌、チーズなど、時間をかけて熟成させる食品はたくさんあり、その中には「どこで寝かせるか」にこだわったものがあるのが面白いところ。
例えば雪を使った「雪室」。
雪室は雪の冷気によって低温の環境をつくり、食品やお酒などを貯蔵する昔ながらの知恵です。現在では日本茶を雪の中や雪室で貯蔵する取り組みも行われています。
ワインの世界もユニークなものがあります。
フランスには、瓶詰めしたシャンパーニュを地中に埋め、土の中をカーヴ(貯蔵庫)として熟成させる生産者もいます。
さらに「海底熟成ワイン」。
文字通り、ワインを海の中に沈めて一定期間寝かせる方法です。
海の中には、地上とは異なる温度、光、圧力、揺らぎなどがあり、近年は、海底と地上で保管したワインを比較し、香りや味わいにどのような違いが生まれるのか、科学的な研究も進められているようです。
雪の中、土の中、海の中。
場所はまったく違いますが、共通しているのは、「時間」と「環境」を使って、その食品の変化を待つという遊び心のある発想です。
摘んだばかりの茶葉で仕上げたお茶も良いですが、少し時間を置き、落ち着いた味わいを楽しむ秋。「どの茶葉を選ぶか」だけでなく、「いつ飲むか」でも楽しみ方が変わるのです。
蔵出し茶と新茶の違いは?

新茶の大きな魅力は、摘みたてならではの爽やかな香りと、みずみずしさ。冬の間に養分を蓄え、春になって芽吹いた新芽から作られる一番茶には、うまみや甘みが感じられます。テレビCMなどでも映像や演出も含めて「爽やか」なイメージが強いですよね。
一方の蔵出し茶は、春に摘んだ茶葉を適切に保管して夏を越します。保管方法や仕上げ方などによって違いはありますが、時間を置くことで、新茶とは異なる落ち着いた香りや角の取れたまろやかな味わいを楽しめるものがあります。
「春に飲む新茶」と「秋に飲む蔵出し茶」。
どちらが「良いお茶」というものではなく、同じ日本茶の季節による違いを楽しむものなのです。
蔵出し茶の歴史。「口切りの茶」とは?
春のお茶を秋まで大切に保管して楽しむ文化は、いつから始まったのでしょうか。かつては、徳川家康が、春に摘んだお茶を茶壺に詰めて保管し、秋から初冬を迎えた頃に茶壺の封を開けて楽しんでいたと言われています。
茶道の世界では、「口切り」という言葉があり、この茶壺の「口」を切ることから、「口切り」と呼ばれています。口切りは、お茶の正月とも呼ばれ、茶道にとって新しい季節を祝うめでたい行事です。春から大切に保管してきたお茶を、季節が移り変わってから味わう。
冷蔵設備のある現代とは保管方法も異なりますが、「秋を待ってお茶を楽しむ」という文化が昔から受け継がれてきたのです。
蔵出し茶はどうやって楽しむ?
せっかく蔵出し茶を飲むなら、まずは茶葉そのものの香りと味わいをゆっくり楽しんでみましょう。
お茶を淹れたら、すぐに飲んでしまうのではなく、まずは香りを感じてみる。
そしてひと口飲んで、うまみ、甘み、渋みや余韻を味わいます。
秋の味覚と一緒に楽しむのもおすすめです。
例えば、栗やさつまいもを使った和菓子など、秋ならではのお菓子と日本茶を合わせれば、季節感のあるお茶時間になります。
温かいお茶がおいしく感じられるようになる秋だからこそ、急須で丁寧に淹れて、ゆるやかな時間を味わってみてはいかがでしょうか。
新茶だけじゃない。秋を待って楽しむ日本茶

春になれば新茶を楽しみにする。
そんな方は多いと思います。
でも日本茶には、春のお茶を秋まで待って味わう楽しみもあります。
春に摘まれた茶葉が夏を越し、秋になって再び私たちの前に現れる「蔵出し茶」。
「新しいものをすぐに味わう」のとは少し違う、「待つことで楽しむ」という日本茶の文化です。
少し肌寒くなる秋は、温かいほうじ茶や番茶も美味しいですが、今年の秋は、蔵出し茶を味わってみてはいかがでしょうか。
その他、秋冬番茶についてのブログもご紹介していますので、こちらもご覧ください。


