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フードマイレージから考えるお茶|1899 CHACHACHA BLOG

2025/05/24 一服のお茶のような話 古幡祐介

フードマイレージから考えるお茶|1899 CHACHACHA BLOG


フードマイレージから考えるお茶

皆さんは「フードマイレージ」という言葉をご存知でしょうか。
フードマイレージとは、簡単に言うと食料の輸送による環境負荷を数値化したもののことです。
つまり、ある食べ物が自分の手元に届くまでに、一体どのくらい自然環境に影響を与えているかが分かる数値ということになります。

今回はそんなフードマイレージから見たお茶についてお話したいと思います。


フードマイレージって何?

フードマイレージについて、さらに詳しく見ていきましょう。
フードマイレージとは、食べ物「food」と飛行機の飛行距離などをさす「milage」を合わせた造語なのだそうです。
これは食料の輸送量と輸送距離を掛け合わせて算出した指標で、二酸化炭素の排出量を想定し、環境負荷の大きさを計る為に生み出されたものなのだとか。

フードマイレージはもともとイギリスで1990年代に起こった「フードマイルズ運動」という市民運動が起源といわれています。
これは「食料の量と輸送距離を意識するようにして、なるべく生産された食料をその地域内で消費することで環境負荷を低減させていこう」という運動だったのだそうです。

フードマイレージは環境配慮の観点から私たちがどんな食べ物を食べた方がいいのかを考えるひとつの指標として見ることができます。
もちろんフードマイレージの数値の大きさだけで本当に環境に良いかどうかは判断できないのでその点には注意が必要です。


フードマイレージはどうやって計算するの?

ではフードマイレージとはどうやって計算するのでしょうか。
それは意外と簡単で、食料の輸送量(トン)に食料の輸送距離(キロメートル)を掛けるだけの計算です。例えば、例えば10トンの食料を50㎞輸送する場合のフード・マイレージは、10×50=500t・km(トン・キロメートル)となります。


お茶をフードマイレージで比べてみた

では実際にいつも飲んでいるお茶でフードマイレージを計算してみたいと思います。
筆者が普段飲んでいる緑茶をみるとどんな数値になるでしょうか。

今回は、東京都内にあるレストラン1899お茶の水でお茶を飲む場合を考えて計算したいと思います。
まず最初は手元に狭山茶がありますので、これで計算したいと思います。
狭山茶の産地は埼玉県狭山市。1899からはおよそ40㎞ほどの距離になります。仮に1tトラックで輸送したとすると以下の計算になります。

狭山茶
1t(トン)×40㎞(キロメートル)= 40t・km

では掛川茶ではどうでしょうか。
1899から静岡県の掛川までおおよそ230㎞です。

掛川茶
1t(トン)×230㎞(キロメートル)= 230t・km

九州のお茶も美味しいです。
東京から遠い産地のお茶では鹿児島県の知覧茶が好きで筆者は愛飲しています。
距離は1899まで車でおおよそ1400㎞。
計算すると以下の様になります。

知覧茶
1t(トン)×1400㎞(キロメートル)= 1400t・km

では、私が以前に書いたブログに出てきたお茶ではどうでしょうか。
信楽の朝宮茶は滋賀県で1899までおおよそ450㎞。
長崎のそのぎ茶は1899までおおよそ1200㎞です。

朝宮茶
1t(トン)×450㎞(キロメートル)= 450t・km

そのぎ茶
1t(トン)×1200㎞(キロメートル)= 1200t・km

抹茶はどうでしょうか。
抹茶といえばやはり京都宇治抹茶ですが、宇治市から1899まではおよそ450㎞です。

宇治抹茶
1t(トン)×450㎞(キロメートル)= 450t・km


フードマイレージから二酸化炭素排出量を計算してみた

さらにこのフードマイレージから二酸化炭素排出量を見ていきましょう。
それは輸送方法によって異なるのですが、その食品を輸送する方法の二酸化炭素排出係数(g-CO2 / t・km)を調べることでおおよその計算ができます。

例えば海外から輸入食品を運ぶ大型貨物船は20g-CO2 / t・kmほどだそうですが、日本の道路を走っている普通トラックはおおよそ200g-CO2 / t・kmとなるそうです。

先ほど計算したフードマイレージ(t・㎞)にこの二酸化炭素排出係数(g-CO2 / t・km)を掛ければ二酸化炭素排出量(g-CO2)がわかるので、早速先ほどのお茶のフードマイレージにトラックの二酸化炭素排出係数(200g-CO2 / t・km)を掛けていきましょう。

狭山茶
40t・㎞×200g-CO2 / t・㎞ = 8,000g-CO2

掛川茶
230t・㎞×200g-CO2 / t・㎞ = 46,000g-CO2

知覧茶
1400t・㎞×200g-CO2 / t・㎞ = 280,000g-CO2

朝宮茶
450t・㎞×200g-CO2 / t・㎞ = 90,000g-CO2

そのぎ茶
1200t・㎞×200g-CO2 / t・㎞ = 240,000g-CO2

宇治抹茶
450t・㎞×200g-CO2 / t・㎞ = 90,000g-CO2


地元のお茶を楽しみませんか?

いかがでしたでしょうか。
先ほどの数字はあくまでも概算で、全く同じ量を同じトラックで運搬した時の数値になります。
実際には異なる運搬方法で、異なる量を運搬されていると思いますので、実際のフードマイレージや実際の二酸化炭素排出量とは大きく異なるかもしれません。
また、東京ではない場所でお茶を楽しむ時はまた違った数値になるものです。

今回の計算では、産地までの距離が環境負荷に影響するという考え方に基づき、環境負荷を数値として確認できたのではないかと思います。

私たちが暮らす現代では、その運搬方法が進歩したことで、環境への負荷は存在しても、運搬した商品の価格に影響しないくらいに費用的コストがかかりません。
フードマイレージが高い商品でもフードマイレージの低い商品より安く購入できる場面も多々あります。

そこで大切な考え方が地産地消です。
地産地消とはその地域で取れた農作物を、その地域内で消費しようという運動ですが、そのメリットの一つがこのフードマイレージを見ると分かるのではないでしょうか。

もちろん地産地消のメリットは環境負荷への配慮だけではありません。
東洋医学には「身土不二(しんどふじ)」という言葉があり、それは自分の身体と住む土地は一体であるという考え方で、その土地で採れた旬の食材を食べるのが健康に良いというものです。
人間の身体は住む土地の気候や環境に影響を受けているため、その土地で育ったものを食べるのが最も体に合っているということなのだそうですが、もしかしたらそういう効果もあるかもしれません。

幸いなことに日本には全国津々浦々、様々なお茶の産地が存在します。
皆さんのお住まいの地域から一番近いお茶の産地はどこでしょうか。
この機会に近場のお茶を飲んでみるのはいかがでしょうか。