日本茶Journey 02|そのぎ玉緑茶
長崎県東彼杵町 池田茶園
池田亮さん
去年より、さらにおいしい「そのぎ玉緑茶」を。
茶葉とともに、その土地の空気や作り手のこだわりをお届けする「日本茶 Journey」。
全国を旅するような気分で日本茶を楽しんでいただきたい。そんな想いから生まれた、日本各地の"つくり手"の技が息づく1899オリジナルセレクションです。
今回は、長崎県東彼杵(ひがしそのぎ)町。
昭和16年創業の池田茶園で、日本茶の選別・仕入れ・ブレンド・火入れ、そして販売までを手がける茶商、池田亮さんにお話を伺いました。
「東彼杵町」というまち
東彼杵(ひがしそのぎ)町は、長崎県の中で2番目に人口が少ない、7000人の静かな町です。
ひとことで表現するなら、「人と景色の町」。
茶畑、海、山、空、川。
全てを一望できるこの景色は、全国的にもなかなかないのではないでしょうか。
そして、この町には個性的な人が多いのも特徴です(笑)
みなさんいい意味でおせっかいで、オープンな方ばかり。最近では町外から移住してお店を開く方も増えていますが、交流が自然に生まれる空気があります。
お茶を育む自然
茶畑の目の前には大村湾が広がっており、海から茶畑までの距離は、一番遠くてもわずか6キロほど。小さなエリアに、多様な自然環境がきゅっと集まっています。
町は山に囲まれているため風が穏やかで、大村湾も大きく荒れることはあまりありません。茶畑は山の傾斜地につくられており、昼夜の寒暖差が大きく、霧が発生しやすい環境。適度な湿度も保たれています。
さらに、多良岳(たらだけ)から流れる良質な水にも恵まれ、土壌の面でもお茶づくりに適した条件が整っています。
こうした環境が、東彼杵ならではのお茶の味わいを育んでいます。
池田さんについて
私は、茶師や茶商と呼ばれる仕事をしています。
茶師の仕事は、お茶を選び、仕入れること。生産者の方がつくった荒茶(一次加工までされた完成前のお茶)を見極め、仕入れを行い、ブレンドや火入れによって最終的な味を決めていきます。
私の場合は、そうして仕上げたお茶を自社で販売しているため、「茶商」でもあります。
生まれも育ちも東彼杵町。茶商の家系に生まれましたが、父と母から「後を継いでほしい」と言われたことは一度もありません。「自分のやりたいことをやりなさい」と言われて育ちました。
ただ、4歳のときに、自分で「お茶屋を継ぐ」と宣言した記憶があります(笑)
実はそれには理由があって。自分が生まれたとき、池田茶園の二代目である祖父が「未来の社長だ、跡継ぎだ」ととても喜んでくれたんです。それが子どもながらに嬉しくて、思わず宣言してしまって。その言葉が、小学校、中学校と進んでもずっと自分の中に残っていて、周囲にも「お茶をやる」と言い続けていましたね。
これは家族にも話したことがないのですが、高校生のとき、一度だけ消防士になりたいと思ったことがあります。でも、今さら言えないなと(笑)その気持ちは胸にしまって、高校卒業後、そのまま18歳でお茶の世界に入りました。
18歳の4月に家業に入り、すぐ新茶の時期を迎えましたが、そこでまず打ちのめされました。「こりゃだめだ~」と思いましたね。
父に連れられて茶市場の入札場に入ると、数百もの茶葉のサンプルが、黒いお盆にのってずらりと並んでいるんです。でも、自分には違いが全くわからない。「全部一緒の茶葉やん」と思いました。飲んでみても、繊細な味の違いはわからない。父が何を基準にお茶を選んでいるのか、全く理解できませんでした。
それでも、家業を継ぐ以上、自分の代で終わらせたくないという気持ちがありました。このまま何も分からないままで終わりたくもなかった。
そこからは、父が仕入れてきたお茶をこっそり一人で飲んでみたり、茶葉を並べて違いを見比べたり。父から直接言葉で教わることはほとんどありませんでしたが、仕事を後ろから見て学び続けました。
そうしたことをひたすら繰り返すうちに、少しずつ違いが分かるようになってきて。
20代前半になると、価格帯の低い二番茶の仕入れ時に「一人で行ってこい」と市場に放り込まれました。池田茶園の一年分のお茶の味が決まる重要な場面です。
それからは、価格帯の高い二番茶、価格帯の低い一番茶、価格帯の高い一番茶、と徐々に重要な仕入れを任されるようになりました。
そして28歳頃には、入札や仕入れをすべて任せてもらえるように。50代、60代のベテラン茶師が多い中で、「その年でよくお茶が分かるね」と声をかけてもらったり、「このお茶はどう思う?」と意見を求められることも増え、自分なりに認めてもらえた実感がありました。
いま、大切にしていること
お客様には、常に新鮮で、できたてのお茶を届けることを心がけています。
一度にまとめて仕上げたほうが効率は良いのですが、それでは「仕上げたて」の味は提供できない。池田茶園では、新茶の時期に仕入れて冷凍保存した茶葉を、必要な分だけ少しずつ仕上げることで、常に新鮮な状態を保っています。
また、池田茶園の代々の味を守りつつ、その中でも自分の感性を大切にして、「去年よりおいしいもの」を求めて毎年お茶と向き合っています。お茶業界は、"生涯勉強"という世界だと思っています。これからも、前年よりもいいものをずっと追い求めていきます。
そのぎ茶ってどんなお茶?
まず、そのぎ茶は煎茶ではありません。
「蒸し製玉緑茶」という、全国でも生産量はわずか1%とされる希少な種類です。東彼杵ではこの玉緑茶のみがつくられているため、「そのぎ茶=玉緑茶」。
長崎では、「緑茶といったら玉緑茶」と言えるほどに身近な存在です。
大きな特徴は、茶葉の形状にあります。煎茶が針のようにピンとまっすぐ伸びているのに対し、玉緑茶は勾玉状にくるんと丸まっています。
煎茶における、精揉(せいじゅう)という茶葉を針金状にする工程がなく、回転する乾燥機の中で乾燥させるので、この過程で丸まった形になります。
茶葉の形がぐりっとしているので、「ぐりちゃ」とも呼ばれています。
味わいは、渋みが少なく、まろやかなうまみ、甘みが特徴。
水色はすごくきれいな鮮やかなグリーンです。全国のどこのお茶よりも、水出しに向いていると思います。水出しにしても、とってもきれいなグリーンがすぐに出てきます。
今回「そのぎ玉緑茶」について
今回のお茶は、私が個人的に好きな「あさつゆ」と「つゆひかり」をブレンドしたものです。
玉緑茶ならではの、まろやかな旨みとコクを引き立てるよう火入れを行っています。
玉緑茶の特徴を前面に押し出すような、ガッツリと旨み・甘み・コクのあるものをお作りすることも考えたのですが、今回は、幅広い方に玉緑茶のおいしさを知っていただこうと思い、優しく口の中にふわっと広がるようなブレンド、火入れを行いました。
急須で淹れるときは、65〜70℃のお湯で、1分ほどじっくり浸出してください。
4、5回手返し(※)をしてじっくりと淹れていただければ、1899オリジナルでお作りした「そのぎ玉緑茶」の良さを引きだしていただけると思います。
(※手返し…急須のお茶を一度に注ぎ切らず、少しずつ数回に分けて注ぐこと)
日本茶Journeyをご覧の皆さんへ
池田亮さんの一日をご紹介
ー 新茶シーズンの場合 ー
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7:00 |
市場でお茶をチェック |
市場に行き、どの茶葉が欲しいか、実際に触って飲んでたしかめる。 |
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10:00 |
入札 |
茶葉を購入するための「せり」がスタート。希望の茶葉を買い付ける。 |
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12:00 |
お茶の"仕上げ" |
仕入れた茶葉をその日のうちに合組(ブレンド)し茶工場で仕上げる。新鮮なうちに仕上げたら、真空して冷凍保管しておく。 |
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18:00 |
帰宅 |
いったん帰宅し、家族との時間。 |
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22:00 |
作業再開 |
子どもたちを寝かせたら、作業再開。他社から依頼されたティーバッグ加工作業などを行う |
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3:00 |
お仕事終了 |
- 入札は日曜・祝日関係なく毎日行われるため、新茶シーズンはこのようなハードスケジュールが2週間ほど続く。
- 新茶を収穫したら、どこのお茶屋さんも早く販売を開始したい。自社の新茶準備と他社からの依頼を同時進行で行うため、作業が明け方まで及ぶことも。
- そのため、この時期はだんだんとやつれていってしまうそう…!そのほかの期間は、もう少し睡眠時間がとれる。

