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1899 CHACHACHA Blog

     

碁石茶と石鎚黒茶を訪ねて~高知県と愛媛県へのお茶の旅~|1899 CHACHACHA BLOG

2022/07/30 心の旅の話 濱田裕章

碁石茶と石鎚黒茶を訪ねて~高知県と愛媛県へのお茶の旅~|1899 CHACHACHA BLOG

高知県と愛媛県と聞いて、どんなお茶を想像するでしょうか。
今回は、1899在籍の日本茶インストラクター・坂上克仁が希少な伝統製造を行っている高知県のお茶・碁石茶と、愛媛県のお茶・石鎚黒茶の製造現場を視察し、刈り取りや製造体験を行ってきたので、そちらの様子をご紹介いたします。仕上がったお茶を飲むだけではわからない、現地ならではの情報をお伝えします。

高知県の碁石茶

碁石茶の名前は聞いたことがあっても、碁石茶が、高知県「大豊町碁石茶協同組合」の登録商標だと知っている方はどの程度いるでしょうか。
碁石茶は、東南アジアの山間部~中国雲南省から四国へ伝わったと言われ、明治まで特産品でした。しかし、昭和に入り生産者の減少と共に碁石茶の生産量が減少し、一時、碁石茶を作り続けているのは小笠原家のみになりました。現在では、その碁石茶の文化を守るべく地域の方々が協同しているとのこと。今回は、その小笠原邸(高知県長岡郡大豊町)の見学をさせていただきました。

高知県の雄大な自然の中で

茶畑見学の前に目を引くのが、一級水系であり、それはそれは綺麗な吉野川。日本三大暴れ川の1つとして数えられ「四国三郎」の異名を持ちます。高知県と徳島県を流れる川です。茶畑の近くを流れており、自然豊かな環境でお茶が作られている印象を強く受けました。当日は30度を超え、暑かったものの、空気は澄み、山間部の心地よさを感じました。

自然仕立て・無農薬

茶畑を拝見し驚いたのが、「自然仕立て・無農薬」。これまで綺麗に刈られた茶畑を多く見てきたため、その「自然感」に驚きました。豊かな環境で伸び伸びと育つ茶葉。これが野性的で力強い碁石茶の源なのかと感じた風景でした。

次にまたまた驚かされたのは「蒸し器」。機械化されている工場も多い中、こちらは石でできた蒸し器です。数百年とこの伝統製法を受け継いでいる碁石茶の文化の素晴らしさに感動しました。

漬け込み、重しを乗せて

その後、刈り取り後のお茶を製茶する場所である「大豊ゆとりファーム」(高知県長岡郡大豊町)へ移動。
今回は刈り取り後の茶葉を蒸して、木桶に葉を移し、重しを乗せる工程まで見学できました。碁石茶は蒸した後に発酵させ、重しを乗せます。いわゆる後発酵茶と呼ばれるお茶です。お茶を蒸して広げる工程があるため、野菜をボイルした時のような「植物の香り」を強く感じました。
今回は拝見できなかったのですが、最終的にはこの木桶から取り出したお茶を3~4cm角に切断し、日干しさせ完成とのこと。碁石茶の語源は、この日干しさせる風景が碁盤の上に碁石が並んでいる様子に見えることからきているとのこと。発酵工程や、木桶に入れるなど、普段見ることがない碁石茶の製造工程がとても新鮮な時間でした。下の写真は、約350kg分の容量です。

愛媛県の石鎚黒茶

続いては、記録すべき無形の民俗文化財「石鎚黒茶」。
石鎚黒茶は、茶葉を加熱した後に微生物により発酵させた、江戸時代から伝わるお茶です。碁石茶と同じ二段発酵により生じる黒い茶葉の独特の香りと酸味、また健康面での効果も注目されています。
石鎚黒茶も、江戸時代から盛んに生産されていましたが、昭和に入り生産者が減少。しかし、地域の貴重な食文化を守るため、十数年前から地元で生産の継承が行われ、現在では、福祉施設や大学・研究機関と協力しながら、西条の特産茶として、生産技術の研究・伝承の取り組みが続けられています。

石鎚黒茶の製造体験

今回は農家の方々にご協力いただき、石鎚黒茶の製造体験をさせていただきました。根元の枝ごと刈り取る「茶刈り」から始まり、選別作業や蒸し作業までを体験。
農家の方々、本当にありがとうございます!!

茶刈りは、2年~3年経過している樹高170cm以上あるお茶の木の枝ごと刈り取ります。ある程度太い枝(幹?)もあるため、それをハサミで切るのはとても大変な経験でした。また今回は体験できませんでしたが、平地だけでなく、傾斜のある茶畑もあり、なかなかの重労働だと想像できます。また刈り取るため畝でなく、一本ごとに分けられて植えられているのが印象的でした。
その後、枝を20~30cmの長さにハサミで切ります。この時につるや実を選別していきます。


蒸して、選別、煮汁をかけて、発酵へ

葉を洗って蒸した後は、選別作業。
この時には枝や実なども含まれています。これも普段はなかなか見ない光景。枝ごと蒸すのは、葉と葉が重ならずに均等に熱が入ることで蒸しムラを無くすためとのこと。
蒸し後の選別作業で、やっと枝や実などの異物を茶葉と分けていきます。その後、蒸した時に出た煮汁を茶葉にかけて、一次発酵。発酵後に、茶葉を揉み、二次発酵させると完成となります。
「全部手作業」というのが強い印象で、「無形の民俗文化財」を継承していくことの大変さを感じました。


お茶とは文化だ

今回、それぞれの農家にお邪魔し、わかったことは、いずれの地域も高齢化が進み生産が困難になってきている状況であること。お茶以外の農業と同じ課題を抱えています。
しかし、碁石茶、石鎚黒茶のどちらのお茶も「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に登録されており、「石鎚黒茶」については「無形文化財」の登録申請を行っているとのこと。いずれも国の重要な文化であると認証されない限り登録されないもので、ここまで来ると歴史も背負った一つの文化であり、単純な飲み物の括りでは語れません。

今後は、1899での商品としての紹介はもちろん、定期的に開催している日本茶セミナー「1899ティーカレッジ」などで、この希少なお茶の価値を伝えていきたいと思います。お茶が「美味しい・楽しい」だけでなく、これらのお茶の製造工程を紹介することで、文化的な発信をしていくことも1899の役割ではないかと感じました。
また、今回は視察スケジュールの中に入れられませんでしたが、同じく民俗文化財に指定されている徳島県の『阿波晩茶』、そして文化財には指定されていないですが、伝統的な製法を数百年続けている岡山県の『美作番茶』を加え、4つの日本の伝統的で希少なお茶の紹介も今後検討したいと考えています。

今回の高知県・愛媛県での体験を1899のお客様にお伝えし、生産地をつなぐ役割を果たしていきたいと感じた時間でした。