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1899流「ゆるやかな時間」の過ごし方| 1899 CHACHACHA BLOG

2021/05/15 ゆるやかな時間の話 太田菜穂子

1899流「ゆるやかな時間」の過ごし方| 1899 CHACHACHA BLOG

昨年から混沌とした生活が続いて心身落ち着かないでいると、時折、もう閉塞感でいっぱいになってしまいます。 これまで一年365日の生活リズムがさほど大きなブレもなく、人並みに波風あれど、平穏無事に過ごせていたことを振り返ると、そうした時間が本当に在り難いことだったんだと改めて気づかされます。その思いが募るほど、一瞬ひとときを大切に慈しんで過ごしていきたいものですね。

不満ばかりいっては罰が当たりますから、せっかくおうち時間がたくさんあるうちに、これまでに訪れた異国の地で撮りためたまま手つかずの記録写真を整理することにしました。好きな音楽をかけながら写真を整理しているうちにバーチャル旅行ができました。写真をみると自分が無意識に探し求めていたのか、不思議とゆるやかな風景を数多く切り取っているのです。その風景をみると”あのとき”の風の音、空の色、木漏れ陽のぬくもりがすぐに蘇ってきます。

こう振り返ってみると、ゆるやかな時間というのは時間の長さとかスローでなくてほっと心がほぐれる気持ちをいうのかなと思っています。ゆっくりしなさい、というのではなく自由にきままに過ごしていいのですよ、という感覚なのかもしれません。ましてや、感覚や価値感は人それぞれです。自分にとっての”しあわせのものさし”で過ごせるようにありたい、と思うこの頃です。

前置きが長くなりました。これ以上の屁理屈でゆるやかな時間を遮ってしまわないうちに

私流のゆるやかな時間へバーチャル旅行の出発です!

1.フィリピン・リパの「ゆるやかな時間」


写真右:私が泊まった伝統的な水田納屋を再生した部屋

フィリピンマニラ空港から車で南へ約1時間のところにリパという田舎町があります。その街の路地を入るとしばらく林道が続いていて、さらにくねくねと奥にいくと、埃っぽい賑やかな田舎の旧市街とは別世界の静かで広大なファームリゾートに行き着きます。リパのゆるやかな時間が流れています。

ある日突然、何を思ってか、これまで自分が当たり前のように慣れた生活を一旦強制的に断ち切りたくなって未知の地を求めてやっと見つけたのがここ。決めごとは2つだけ。食事は、1日一回ビーガンの食事を思う存分ゆっくりしっかり食べる。そのほかのことは、何も計画を立てずに思うままに過ごしてみようと決めたことでした。

ここにはプール付きの高級なお部屋もあるのだけど、私は、南フィリピンの伝統的な水田納屋をイメージした趣のあるかやぶき屋根の小さな2階建ての納屋(お部屋)に泊まることにしました。趣があっていいじゃない!と、そこまでは良かったけど。。。ある晩、自然な風が欲しくなってクーラーを止めて窓を開けて寝たら、夜中、部屋中に羽蟻が入り込んで仰天しました。湿地帯なのだからクーラーなんてなかったらハエや蚊といつも同居しなきゃならないわけですね。小さい頃は日本もクーラーがなくて夜は蚊帳をつって寝てましたけど、もうあの頃には戻れない自分がいることに気づかされました。けれど、そんな不便さが数日すると次第に面白さと慣れに変わっていきました。ただし、短期間だったからそう楽しめたのだと白状しています。

リパという未知の地で過ごしたちょっとスリルなゆるやかな時間は、これまで味わったことのない解き放された旅の思い出になりました。あれから数年。今では、案の定、すっかり急いて時間を追いかける元どおりの生活になってしまっているけれど、あのゆるやかな生活と時間を実感できたのは、これからの人生において良かったと思っています。

写真: 都会人が慣れ浸しんだ娯楽といわれるものはなーんにもない。ただ、静かな風景と野鳥と木々。
心の思うままに小さな葉っぱと花びらを一つ一つ水の上に浮かばせる。
これがすごく難しくて、静かなでゆるやかな気持ちでやらないとうまくできない。少しでも力が入って置こうとすると、葉っぱが水に浸って沈んでしまう。私の初作品は大失敗。翌日、気持ちを入れ替えてなんとか仕上げたけど心の奥が読まれてしまいそうなので、投稿は遠慮しておこうっと。(恥)。

2.イタリア・ミラノの「ゆるやかな時間」

イタリアなんて大っ嫌い!っていう人に(幸い)これまで会ったことがありません。

まあ、いい加減でひどい目にあった〜、っていうことを数回耳にしたぐらいかな。そんなことを聞いたのも、約束時間の5分前に行く律儀な私たち日本人の小言ですもの。(苦笑)

でもそんなことを言われたイタリアの人にしてみたら、それはいい加減なんじゃなくておおらかなんだと頑固に言い張っておそらく引きません。まあ、私にしてみたらお互いの言い分はおありなようで引き分けにしておくことにしましょう。

ミラノの中心街でゆるやかな時間を過ごすにはどこに行ったらいいですか?ってミラネーゼに聞いたら、きっとこう答えると想像しています。「なんであえてその場所が必要なんだい?だったら、わざわざ行かずに、今、ここに座ってワインとパスタで楽しんでいきなよ! マンジャーレ!」なんて言われそう。 「ゆるやかな時間はすでにあるのではなくて、自分がそう思わなければ感じられないものさ。だから、人がどう思うと、自分の好きな時に好きな場所で勝手にそうしたらいいよ。」って肩を抱いてそういいながら、あとはそっとしておいてくれそうだから。彼らにしてみたら、そんな捉え方なのではないかしらと思うのです。少なくても私の友人たちはそう言うに違いありません。独断と偏見ですが。。。。いや、そう思っていたいです!

さて、みなさんはどう思われますか?

写真:いつ来ても感じるのは、食材であっても見せ方にこだわりがある。イタリア人はとっても職人気質が強いのかもしれない。

写真:異国の地を訪れると必ず行くのは、食料品売り場。その国の経済や文化が一目でわかるから。ここはミラノの旧市街で毎週末開かれるオープンマーケット。農業国イタリアらしい色とりどりの有機野菜の豊富さに感動する。地元に住んでいたら、いっぱい買いすぎてしまいそう。こうした風景も今では、コロナ禍で閉鎖しているのだろう。

写真:デパ地下の肉売り場。今はもうサラミも土産に買っていけなくなったのでとても残念。
地元の食材を見繕って家族の土産を買うのが、旅先で一番好きなゆるやかな時間だった。

3.スペイン・アンダルシア地方セビージャ(セビリア)の「ゆるやかな時間」

ずっと行きたかったフラメンコの聖地セビリアそしてヘレス。マドリードから電車で3時間ほど南下すると日差しの強い太陽の街セビリアに辿り着きます。イスラム支配の名残があってお馴染みの世界遺産が多く見られ何日いても飽きない。アンダルシア地方はスペインのなかでもひと味違うエキゾチックな雰囲気を満喫できる場所です。そしてこの地はフラメンコ発祥の地で、毎年開催される春祭りには、数日間にわたってセビリアの街中の会場で大小のフラメンコショーが観に世界中からフラメンコファンが集まります。

 

写真上:南スペインの空は本当に青い。澄んだ青空とカラフルな外壁の建物、そしてカテドラル。その風景だけでも、南国のおおらかさに魅了されながらゆるやかに心が踊ってしまう。

写真下:スペインに行ったら搾りたてのオレンジジュースは必ず飲んで! 3月末なのに街じゅうにオレンジが成っていた。



写真:セビリアの路地裏のお店。散歩しながらランチを食べに直感で入ったけど、シェリー酒で柔らかく煮込んだ豚肉が絶品だった。未だにあの味が忘れられない。

写真: 地元の常連らしきご家族のランチ風景。窓から差し込む木漏れ陽を浴びながら、静かに食事をとりながら、なごやかな会話を楽しんでいるようだった。まるで絵画のような光景でずっと目が離せなかった。

写真: このお父さんがキビキビと一番働いていた。きっとオーナーなんだろう。

写真:セビリアの中心街から一歩路地裏で急須を飾るショーウインドーを見つけた! え?!日本茶飲むのかな?って思うのだけど、お茶は中国茶のようだ。どんな形式であれど、お茶文化がこんな遠い異国の地の路地裏にあるだけでもとっても嬉しくなった。


 

 


写真一番上: 夜、招待されたスペイン国立バレエ団のプレミア公演へ。今は、こうした素敵な公演がコロナ禍で全て中止になっているのが本当に残念でならない。フラメンコは、とても情熱・情念的なものだけれど、長い歴史の中にもそれなりにゆるやかな流れがあってとてつもなく奥深い舞踏なのだろう。

写真中央: セビージャの中心地を歩いていたら、素晴らしい色彩が一面に置かれた店に思わず惹かれて足が止まった。そこはおそらくフラメンコ衣装の生地を専門に扱う地元の老舗生地屋のようだ。子供の頃から、こんな色合いを見て育てば色彩感覚もそうなるに違いないなと思った。



写真上下:1929年にセビリア万博に建てられたスペイン広場。アルハンブラ宮殿に模して作らせたことで有名。ここにいると、イスラム文化のときの流れに引き込まれて時間が止まってしまう。ゆるやかな時間はまさにこうした感じだと思う。



写真下: へレスといえば、シェリー酒。スペイン語で、ヴィノ・デ・ヘレスというのだそう。原料は白ぶどうだけで醸造される。私のお酒デビューはTIOPEPEというシェリー酒だったけど、地元の方に勧められたこの醸造所は知る人ぞ知るすごいワイナリーだった。



写真上:入り口の壁には何気なくピカソの実画が飾ってあって、思わず息をのんだ。

写真下:この奥にも小さいながらも美術館なみのコレクションを多数飾ってあって、訪れる観光客を虜にしているらしい。さすが、シェリー酒製造の大御所。



写真上: きちんと積み重ねられた何百もある大きな樽からシェリーの香りが漂う。

静かな蔵に白ぶどうがゆるやかにプツプツと音をたてて発酵しているのを想像していると、いつの間にかゆるやかな時の流れに埋もれていた。

さあ、ゆるやかな時間へのバーチャル旅行はいかがでしたでしょうか。

実は、1899がみなさんに提唱する「ゆるやかな時間」とは、ある約束ごとがあるようなお作法の時間ではありません。みなさんが心ゆくまで赴くままお過ごしいただけるような空間づくりだと思っています。一歩店内に入ると、そこには1899の想いを託した時間の流れがあります。それは時計で測る”ときの長さ”ではなく、ガラスウインドー沿いに置かれたモダンな縁がわやウインドーから差し込む陽のひかりがつくるゆるやかな温もり、無垢の香りを漂うようなインテリアなど、訪れる方々の心がほっと和めるようにと願いお迎えできる空間でありたいと思っています。

1899がご提供する「ゆるやかな時間」とは、私たちが無理に押しつけることなく、お客様が思うままに心を放ち、ほっと癒されるやさしいゆりかごでありたいと思っています。

最後に1899の「ゆるやかな時間」の映像で今日の長旅の疲れを癒していただけたら嬉しいです。みなさんが素敵な毎日が過ごせますように。