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2020年後半のお茶業界の動向・課題は? – 日小田知彦氏(エコバイ株式会社 代表)|1899 CHACHACHA BLOG
2020/12/19 一服のお茶のような話 濱田裕章
お茶業界の動向・課題について伺いました
2020年も終わりを迎えています。2020年のお茶業界はどのような年だったのでしょうか。5月30日のブログ「お茶業界の状況は?」に引き続き、お茶業界の課題解決のために各産地と行政をつなぎ、流通やブランディグなど多方面で取り組むエコバイ株式会社の代表である日小田知彦氏にお話を伺いました。
ご無沙汰しております。さっそくですが、前回ブログの取材以降、2020年後半のお茶業界の動向・課題についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。お茶業界について、まず最近で言えば、お茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)などのカテキン群が、ウイルスの感染を防ぐことが注目されており、各方面でこのエビデンスをとっている状況です。先行してレポートを出されている団体もありますので、改めてお茶の持つ可能性にお茶業界全体が期待・注目しています。
さて、今回の新型コロナウイルス感染症による影響ですが、お茶業界が以前から抱えている潜在的な課題が如実に現れてしまう結果になったと感じています。5月に話を掲載いただいた時にも触れましたが、農協を中心とした流通の在り方についてです。どこの業界も同じかもしれませんが、お茶業界についてもコロナ禍において二極化しています。ひとつが農協を中心に取引されている農家さん。ふたつめがそこに頼らず、以前から直販の仕組み構築やブランド化に取り組んできた農家さんです。
今年はお茶の出来が悪く全体的に価格が低くなってしまった傾向があります。新茶の値段も低かったですが、2番茶については1キロ100円台という金額もありました。驚きの金額です。販路が農協に頼り切った場合、付加価値をつけて販売していくことができませんので、このような価格での取引に応じざるを得なくなります。このような農家さんは非常に厳しい状況になっています。
しかし、これまで積極的に直販に取り組んできた農家さんについては、状況が好転しているところが多く見受けられます。「STAY HOME」と「在宅」によって、自宅にいる時間が長くなり、「オフィスなど外ではコーヒー等を飲んでいたが、自宅で飲むなら自分の好みのお茶を飲みたい」というニーズをうまく取り込めていると考えています。自宅需要、個人需要、個別の需要に対応できているのです。加えて郵送時にお手紙を添えるなど農家と消費者の信頼関係の構築を図っている面もあり、結果、ブランディングや顧客の囲い込みに成功しているのです。
イベント等での活動では、ほぼ中止、延期になっています。県などの各地域も積極性が失われており活動は停滞。また県外からの人間を遮断する地域もあり、感染症対策としては必要でありますが、経済活動の点では弱くなってきています。実際に私も東京都のオフィスだけでは、各地域と円滑にコミュニケーションを取れなくなり、今年の10月に九州本店に移動し、そこで中心的な業務を行っています。皆さんご存知だと思いますが、各地域から見た東京のイメージは厳しいものがあります。この鎖国とも捉えられる状況は非常に問題だと感じています。地域内で働き手が確保されていれば良いですが、必ずしもそういった地域ばかりではありません。自分たちだけでの力では限界があり、そろそろ地域は県外からの働き手、ビジネスパートナーを受け入れていかないと経済発展に限界があります。私自身それが原因で止まった事業を今年いくつも見てきました。
コロナ禍におけるお茶業界の動向・課題は理解できました。では実際に日小田様がお取引されている産地や販売者様からの要望や悩みには変化はあるのでしょうか。
本質的には変わりません。売ってほしい、ブランド化したい、という点につきます。特段今年フォーカスする点としては上述した通り価格が減少しているので何とか高く売りたいという要望でしょうか。販路の構築に関わる部分になります。二極化していると言いましたが、農協中心に販売している産地・農家については完全に気持ちが冷え切っています。もともと付加価値をつけられず収益が上がりづらい、また後継者がいないという課題を抱えていた中、このタイミングでお茶を諦め閉園、別の作物にシフトするという農家さんもいます。どんな仕事でも同じですが、熱量が無いともうダメです。熱量があり、自分達で販路を構築している農家さんについては「製造者」から「販売者」へと変化しつつあります。設備等での新規投資も行っています。業界の二極化は顕著になってしまいました。この話は、お茶に限らず、肉、野菜など全てに共通した話です。しかし、特に高齢化した農家さんは変化ができません。
どの業界にも通じるお話ですね。来年ですが、新茶時期をひとつの区切りとした場合、短期的な業界の動向はどのような展開になると見込んでいますでしょうか。
良くも悪くも今年の後半と変わらないと思います。感染状況に多少変化はあるものの、ある程度コロナウイルスへの対策が明確になっている今、やるべきことは明確になってきています。二極化した業界で、自分たちがどのポジションにいるか理解し、目標に向かって行動していくだけです。厳しい言い方ですが、変化に対応できていない産地・農家は残ることができないと思います
御社はお茶業界の課題解決、各産地と行政の橋渡し、流通やブランディグといった多方面で活動されていますが、コロナ禍において今後どのような取り組みを行っていくのでしょうか。
まず直近では毎年開催していた「国産お茶フェス」を2021年1月30日、31日にオンラインで開催します。内容としては、事前にお茶の飲み比べセットをご自宅にお届けし、当日はそのお茶を淹れながらWEBを通して茶園の紹介等を行う予定です。10茶園、各3種、計30種類をお届けしますので、非常に価値ある体験ができると思います。お茶の量も一煎で終わってしまうような量ではありません。「茶の間」という言葉があるように、ひとりだけでなく、ご家族・友人に広がるような商品設計をしていますので、当日は日本中のご家庭でみんながお茶を飲む時間を作れれば嬉しいです。さらに秋には、新型コロナウイルス感染症対策を徹底した上で、リアルでの開催を検討しています。1月のオンライン形式はそれに向けた導入として考えています。
また2月には大分県の産地に2泊3日の視察ツアーを組んでいます。ティーツーリズムの活性化は10年ほど前からインバウンド中心に取り組んできましたが、今回は国内の方々が対象です。こちらはすでに予約受付終了しておりご好評いただいています。新型コロナウイルス感染症は確かに注意しなければいけないですが、このままでは地域が衰退してしまいます。もっともっと動かしていかないとダメです。感染症対策が必要なため、通常開催よりもコストは増えますが、どちらかを選択する時期ではなくなってきていると考えています。こちらの視察ツアーについては6月にも開催できるよう企画準備中です。
積極的ですね。色々とありがとうございます。最後に産地、販売者の方々に向けて、この状況下を乗り切っていくためのアドバイスをお願いできますでしょうか。
これまで申し上げた通りですが、地域内だけで解決しようとせず、積極的に県外などの外部の方々と手を組み取り組んでいってほしいと思います。感染症対策を徹底した上で、経済をまわしていくために何ができるか積極的に考え、行動していっていただきたいです。特にはインターネットを通した販売体制を整える。もしもそれができないようであれば、地域ぐるみで考える。先ほどの話と多少矛盾する表現ですが、やはりまずは地域内で結束を高めていくことが、最終的な収益にも貢献すると考えます。
今は恐らく一番考える時間がある時期です。この時間をどう生かすか、今後どう仕掛けていくかを考えていただき、アフターコロナ(終息後)にスタートダッシュを切れる準備を数多く仕込んでください。私たちもお茶に関わる様々な方々と二人三脚で頑張っていきます。
編集後記
本日はお忙しい中、日小田氏に直接お話を伺うことができました。取材後、そのまま羽田空港に向かわれ、コロナ禍でありながらエネルギッシュで生き生きとされていました。CHACHACHAブログのためだけでなく、私自身の仕事に対するモチベーションも上がった時間になりました。ニュース等ではネガティブ情報が多く、確かに予断を許さない状況ではありますが、新型コロナウイルスと関係なく社会は時を刻んでいきます。変化に対応しなければ、今を乗り切ることはもちろん、終息後の展開も見込めないでしょう。今回のブログがお茶に関わる多くの方々の目に留まれば幸いです。
今回ご紹介した国産お茶フェスWEB開催については、こちらをご覧ください。