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旬の“テマヒマ”しごと 〜ゆるやかな時間体験記〜 | 1899 CHACHACHA BLOG
2020/06/27 ゆるやかな時間の話 天心庵守のひとりごと
「自然回帰への誘い」
梅雨の合間をぬって差し込む今朝の朝陽がいつになく愛おしいほど眩しくて、清々しく心が洗われます。
この度の出来事で世界は一変したけれど、自然の流れはさして変わらずいつものように私たちの生活に寄り添ってくれてる気がしています。
先日おうち時間で過ごした日々は、働きづめの日常から次第に焦燥感と疎外感から開放され、時間の流れが変わったことでたくさんの気づきがありました。
私の人生において様々に価値観を塗り替えて、当たり前のことが無限ではないということをしみじみ実感しました。だからこそ、日々、刻一刻を大切に慈しみ、謙虚に歩んでいきたいものです。
水無月(みなづき)とは、陰暦でいうところの六月。これは水がないというのではなくて本来「水の月」といい、田んぼに水を引く月ということだそうです。農耕で栄えた私たちの国は、四季折々、採れた旬の食材に感謝し、英気を養い健やかで家内安全を祈ってきたのでしょう。
ものが豊富でない時代は、貴重な食材をより長く保存するために厳しい自然と共生しながら人々が創意工夫を凝らして生み出した手法だったのでしょう。
このたびの自宅待機が下されたときに、空や海・川が浄化され澄みわった映像をテレビで見ました。
その時にはどれほど人間社会が自然と共生することに反してきたか目の当たりにしました。たった数日間なのに、一瞬でも自然の蒼さが取り戻せたのです。こんなに自然をいじめてきたのに優しく大らかに迎えてくれた自然の力に驚かされ、とても心が痛くなりました。私たちの生活は自然の中にあるのだと改めて感じています。
「旬のテマヒマしごと 復活!」
悶々としたおうち時間の中で、少しずつ楽しみを見つけながら過ごしたいという気持ちになったのは私だけではなかったようですね。SNSからも前向きに充足したおうち時間を分かちあう情報がたくさん流されてきて私も背中を押されました。
そこで私も久々の手仕事に挑戦!
馴染みの八百屋さんに並んだ旬の材料を順々に漬け込みました。
一番早い時期に並んだらっきょうから青梅、最後に生姜。新生姜は、炊き込みご飯も一緒に味わいました。
薬用植物として中国から伝来したといわれる効能高いらっきょうは、そのままではとっても辛いのに甘酢で漬ければ食べられるのは先人の知恵のおかげです。
らっきょうも青梅も、生姜漬けもじっくり手間と時間をかければより美味しいはず。
ただ、最近は調理方法も進化して即席レシピも素晴らしい仕事をしてくれるようです。
けれど、一つ違うとすれば、手間を惜しまずに丁寧にこさえる時間が味覚だけでなく心の美味しさに加わるのだと思いたいです。
定番・甘酢漬けも美味しいけれど、赤ワインもおつなもの。そんな創意工夫が楽しい。
南高梅の旨味がゆっくり時間をかけて抽出されている。
母から譲り受けた30年ものの梅酒。琥珀色が尊い時間の流れを投影している。
あれこれ工夫しながらテマヒマしごと。今年はクミンと檸檬で蜂蜜酢漬け。夏バテの万能薬。
エネルギーがたくさん詰まった新鮮な旬の食材。
瓶の中に自然の力を一気に閉じ込めて、喜ぶ家族の顔を浮かべながら時が過ぎるのも忘れた穏やかでゆるやかなひとときでした。
「我が家のぬか床、その後」
数十年前まで、実家には母が丹精込めた30余年もののぬか床がありました。
熟成されたぬか床で作る漬物は、それはそれはなんとも言えない味わいでした。子供達もおばあちゃまのぬか漬けを食べに実家についてくるくらいだったのを懐かしく思います。母が病床についてから、私に毎日、ぬか床を混ぜるように頼むのでなんとか
やっていたものの、愛情の薄さが見抜かれたのかいつのまにか台無しにしてしまったことを今でも悔いています。
そんなこともあり、昨年、何を思いきや冷蔵庫でできるぬか床を再スタートし、はや一年が経ちました。仕事で家を留守にしても腐ることもなく1週間程度でも元気でいてくれています。
おかげで、毎日の朝茶にはぬか漬けが加わるようになって、私のプチ発酵生活はそのまま継続しています。少しずつ糠を足しながら、防腐と香りづけに様々な食材をいれながら時間をかけてきて、母のぬか漬けには到底及びませんが、なんとかうまく仕上がっているのが嬉しくてたまりません。 ぬか床のこさえは簡単ですが、決して手は離していけないぬか漬け。まるで子育てのようです。
私は、折りを見ながら時折常温に戻してぬか床に息を吸わせながら熟成させています。
ぬか床を混ぜる時は、がんばって美味しくなってねと優しく声をかける。
なんとか新参もののぬか床ですが、今のところ素直に私の愛情に応えてくれているようです。
夏みかんの皮や赤唐辛子、山椒、胡麻、塩昆布、煮干し、ちょっと古くなった茶葉もぬか床と仲良し。
テマヒマかけるほど正直に応えてくれる。旬の茗荷が美味に仕上がった。。
「色彩を楽しむ。続・四十八茶百鼠との戯れ」
おうち時間でゆるやかな時間を味わえたもうひとつの楽しみは、曼荼羅(まんだら)ぬり絵でした。
心の気分に応じて好きな色を曼荼羅模様に映しだしていくのです。
何も強制されるものはなく、自由に素直に色と戯れながら自分と向き合ってるようでした。色は自然が創り出したもの。前にお話した和の色彩にある四十八茶百鼠の色も、気候風土の中から微妙な色合いとなって変化する自然色の賜物なのだと思っています。
このぬり絵で揃えた72本の色鉛筆は日本製ではないのでちょっと和の色彩には忠実ではないけれど、四十八茶百鼠レベルの繊細な色揃いが気に入っています。
穏やかに呼吸を整えて好きな音楽をかけながら曼荼羅柄の色づけをしていると、煩わしい気持ちが放たれて目の前の曼荼羅が吸い取ってくれてる気分にさえなりました。
私はそれほど単純なのかもしれませんけれど、いくつになっても自分に素直な気持ちは失いたくないと思っています。怒りも不安もそう長くは続かないはず、限りある命を大切に前向きに上手に折り合いをつけながら乗り越えていこうと思います。
この喧騒な都会人の生活には、ゆるやかな時間は決していつもあるものではなくて、むしろ自分で積極的に作り出さないと巡り合えない時代になってしまったのかもしれません。
このほどの経験は、そうしたことを気づかされた稀な出来事でした。
一期一会
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* 1899は、7/1より営業を再開いたします。
「お茶と共に過ごすゆるやかな時間」を皆様と共にこれからも大切にしていきたいと思っております。ぜひ、ご来店ください。
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