突然ですが、皆さんは、
普段どんな気持ちで、何を思って、台所に立ち料理を作っていますか?
“たのしい”
“面倒くさい”
“やりがいがある”
“むずかしい”
“毎日苦労する”
“大切な人へ作るもの”
etc・・・・・・
どうでしょうか。
作家の 幸田 文 が自身の台所仕事を綴ったエッセイの一節に、このようなものがあります。
氏が14歳の頃に手伝いから台所に立ち始めて、48年経った今に台所仕事を思い返す場面。
「まだこの先どれほどかのあいだも、私はやはりここに立って、野菜を洗い、庖丁をもち、火を使って、ささやかな作業をつづけようと思うのである。老いて、いつまでも、なにもそんな台所仕事など、苦労でしょうに、と娘は庇ってくれる。その思いやりは嬉しいけれど、首を横にふりつつ、私はつい微笑をうかしてしまう。苦労だと思ったこともあるけれど、そんな時期はもう通りすぎて、今はここでする作業も、ここに立つ気持ちも、落着いて、静かで、たのしいのである。私はここと縁をきりたくない。」
(台所 『暮らしの設計』より)