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世界のお茶事情~トルコ編~|1899 CHACHACHA BLOG

2022/12/24 心の旅の話 田渕公実子

世界のお茶事情~トルコ編~|1899 CHACHACHA BLOG

皆さんこんにちは。
あっという間に2022年も年の瀬が迫り、今年のCHACHACHAブログも本ブログが最後となりました。
2022年もご愛読いただいた皆さん、誠にありがとうございました。来年度もCHACHACHAブログをどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、本日12月24日はクリスマスイブですが、今年は曜日の巡り合わせも良く土曜日がイブですので、25日のクリスマスと共に年内最後の週末旅行を楽しまれている方も多いのではないでしょうか。
中には来年こそはと久しぶりの海外旅行を計画されている方もいらっしゃるのでは。
旅は計画している段階から楽しみが始まりますが、実際に訪れた先での楽しみでもあり、後の思い出に鮮明に残るのは、いつもと違う風景や観光スポットだけでなく旅先で口にする食事や飲み物の味や香り、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回のブログは筆者が訪れたトルコのお茶事情を異国情緒溢れる景色と共にご紹介します。

何はともあれまずはお茶

今から数年前、トルコに住む友人の誘いでトルコのイスタンブールと古都ブルサを訪れました。
イスタンブールの空港で出迎えてくれた友人と空港を後にして最初に向かったのは海辺のレストラン。お昼時だったので先ずは食事で歓待といった感じですが、食前に紅茶が運ばれてきました。
日本でも和食のお店で最初に煎茶を出されることがありますが、海外では初めての経験です。
長旅お疲れ様、先ずはお茶でもどうぞ。というもてなしの心を異国でも感じられて嬉しくなります。
ちなみにトルコでは紅茶のことを「チャイ」と呼びますが、日本人がチャイという名のお茶を 思い浮かべるときにはインドのミルクとスパイスが入った方の「チャイ」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。スパイスやミルクの入ったインドのチャイとは違い、トルコのチャイは濃い目に淹れたストレートティーですっきりと飲みやすい味わい、程よい渋みとスッキリとした味で食事にも甘味にも合いそうだなというのがこのお茶の第一印象でした。一般的な紅茶と違いミルクやレモンは添えずストレートか角砂糖を入れて楽しみますが、甘党が多いトルコでは小さなグラスに入った紅茶に角砂糖を2つ以上入れて飲む人もいるのだとか。
緑茶のように甘くないお茶の方が馴染み深い筆者は滞在中終始砂糖抜きでいただきました。

トルコに到着後、最初のチャイ。

空港からイスタンブール市内へ向かう途中にある海辺のレストラン。

世界第一位の紅茶消費国トルコ、ティータイムは一日何回?

トルコ滞在中に現地の友人と生活を共にする中で驚いたのは、1日に紅茶を飲む回数がかなり多いことでした。朝食のお供に紅茶、船を待つ停留所でも紅茶、さらに乗り込んだ船の中で紅茶、目的地のミュージアムの中で紅茶、数分後にミュージアムを出てまた紅茶、宿に戻る前にも道端で紅茶、といった具合に1日最低5回は紅茶休憩を設けます。それも1回の休憩で1杯〜2杯は飲むので小さなグラスで飲むとはいえ1日の紅茶摂取量はかなりの量になりそうです。

欲しい時にいつでも淹れたて熱々の紅茶が手に入るのは、港や商店街などにもお茶売りが居て独特の形のグラスに入った熱いお茶を売ってくれるから。どこでも使い捨てのカップなどは一切使わずにガラスの器とソーサーに角砂糖を添えて提供してくれる古き良きスタイルがとても好印象でした。
伝統のスタイルを守ることが結果的にプラスチックごみを出さず、環境保全にも繋がっているようです。街中を歩いているとカジュアルに紅茶を楽しめるティーハウスもたくさん目にします。
ちなみにチャイ1杯のお値段は平均2トルコリラ(当時の為替で約20円)ほどでした。気軽に買える価格で地元民と一緒にティータイムを頻繁に楽しめるのは観光客の私にとっても嬉しいポイントでした。
のんびりとティータイムを楽しむ人々を眺めながら、トルコは街のどこにいてもいつでも気軽にお茶を楽しめる優雅な国だなぁという印象を受けました。

そのような1日に何杯もチャイを楽しむ生活スタイルのせいか、実はトルコの人口あたりの紅茶の消費量は世界第一位。
紅茶の消費が多い国、ティータイム、というキーワードでどうしても真っ先に思い浮かべがちなのは英国ですが、1日に何回も紅茶を飲むトルコ人の生活スタイルを現地で実体験してからはトルコが世界第一位の紅茶消費国であることに大いに納得しました。

イスタンブールの港、Kadikoy(カドゥキョイ)にあるティーハウス、ギリギリですが看板にチャイ(Cay)の文字。

ミュージアムの出口で給水所のような感覚で立ち飲みするチャイ

船着き場でフェリーを待つ間にチャイで休憩

カフェでの朝食とチャイ

トルコ流紅茶の淹れ方

トルコの紅茶「チャイ」は私達が普段飲んでいる紅茶とは少し違う淹れ方で作られます。
最初にチャイダンルックと呼ばれる2つ重なったポットを用意し下のポットに水、上のポットに茶葉を入れ火にかけ、下のポットの水が沸騰したら上のポットにお湯を注ぎ暫く加熱しながら待ちます。充分煮出された頃に上段から濃い目に淹れた紅茶をグラスに入れ下のポットのお湯で割って飲みます。

通常の紅茶は長い時間加熱すると渋みが出やすいですが、トルコ紅茶の茶葉は長く蒸らしても渋みが出にくい為、お店などではポットをトロ火にかけて温めたままにしている場所も見かけました。

トルコ紅茶に使用する茶葉のほとんどは国産でまかなわれ、黒海沿岸のリゼ県という場所で生産された茶葉が主に使われます。リゼ県の温暖で降水量の多い気候と肥沃な土地は茶葉の栽培にとても適しており、茶葉の形はブロークンタイプと呼ばれる粉状に近い形状です。
トルコでの茶葉の栽培は当初、この旅行でも訪れたオスマン帝国最初の首都である古都ブルサで始まりました。
しかしブルサの気候が合わず栽培が上手くいかなかった為、温暖なリゼに移したところ現在のように安定した生産量を得ることができたそうです。

一般家庭で使うチャイ用ポット、チャイダンルック。

ブルサのカフェで4名分のチャイを頼んだ時に登場したチャイダンルック。

世界文化遺産ブルサの緑の霊廟イェシル・テュルベ(Yesil Turbe)

トルコ紅茶「チャイ」を通じて垣間見えたトルコ人の豊かな価値観

先述の通りトルコティーはミルクやレモンなどを使用せず、お砂糖のみを添えて楽しむのが主流な上、基本的に茶葉の種類・フレーバーも1種類のみです。
対して日本ではお茶といえば緑茶、ほうじ茶、抹茶をはじめ、最近ではほうじ茶ラテや抹茶シェイク等アレンジを加えたメニューが街のあちらこちらで売られています。

イスタンブールのようなトルコの都市部を歩いていて気付いたのは、世界中どこの繁華街を歩いても必ず目にする世界的チェーンのファーストフードやコーヒーショップの看板をほぼ見かけず、トルコ料理店以外のレストランを見かけることもほぼ無かったこと。トルコ人の友人曰く世界三大料理と謳われる自国のトルコ料理があれば皆それで充分満足なのだそう。
日本から外国チェーンのカフェやファーストフード店が無くなったら日本国民はさぞかし寂しいだろうなと思うのと同時に、自国の文化や伝統的に受け継いできた味が一番!と自信を持って答えられるトルコ人の友人が眩しく見えました。何かを足したりアレンジしたりすることなく、同じ味をシンプルに味わうというトルコ紅茶「チャイ」の楽しみ方からも感じられたのは、トルコ人の自国の食文化や伝統を大切にする豊かな価値観でした。

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