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一人でも、誰かとでも。台湾茶から見えたお茶の良さ|1899 CHACHACHA BLOG

2021/05/01 心の旅の話 ナンゴウ

一人でも、誰かとでも。台湾茶から見えたお茶の良さ|1899 CHACHACHA BLOG

初めまして、茶バリエの南郷恵珠と申します。1899ブランドのホテルである、ホテル1899東京にてフロントスタッフをしております。

たまたまですが私は高校・大学と茶道部で裏千家の茶道を学んできており、元々お茶には人一倍興味がありました。ホテル1899東京に勤め始めてからは尚のこと、日本茶の魅力にどっぷりな私ですが、台湾人の父のもとに育ってきたお陰で実家にいた時に飲んでいたのはもっぱら台湾茶でした。

そこで今日は台湾茶について、私のちょっと恥ずかしいエピソードを添えてお話ししようと思います。

皆さんは、台湾茶というとどんなイメージがあるでしょうか。

台湾人にとってのお茶は、ほとんど日本人にとってのそれと同じ感覚で、お家にいて家族団らんや客人をおもてなしする時のお供にもお茶、出かけるときにはタンブラーの中にお茶、街中のジューススタンドにも必ずお茶メニューがズラリと並んでいて、どんなシーンにもお茶があります。

私の(日本の)実家では、台所にある急須にはいつでも蓋まで付くくらいまでぎゅうぎゅうに台湾茶が入っていて、お茶を飲みたいときにはそこに熱いお湯をポットから入れて、同じお茶の葉で1日何煎も飲んでいました。

ただ長い間、こうして何煎も飲むのは父の自己流なのか本当の台湾式なのかわからないまま過ごしてきました。

それを確かめられたのはつい1年半ほど前のこと。台湾へ一人旅をしに行った際、初めて「茶館」(ティーハウス)にお茶を飲みに行ってみました。

台湾人にとってのお茶は日本人にとってのそれと似ていると話しましたが、日本の茶道のような芸道も実はあり、特別な道具をいくつも使ってお茶を愉しむのですが、現代人の日常生活の中でも未だにその光景が残っています。一家に一セットは茶芸の道具が常備されているので、これは日本人にとっての茶道と違っている点かもしれません。

茶館ではその茶芸を、素敵な茶道具一式を使って丁寧に教えてもらいながら、美味しい台湾茶や中国茶を愉しむことができると聞いて行ってみたのですが、メニューを見て固まってしまいました。


新台湾ドルでの表記なので、500元≒2,000円ほど。

高山茶や凍頂烏龍茶、東方美人茶などのお茶が2,000円~4,000円弱、それとは別に「お湯料」が800円・・・?

わざわざ「お湯」と書いているということは、お茶の銘柄が書かれている部分はきっとお茶の葉のみのお値段で、ここでいただくためにはきっと「お湯代」をそのほかに払わなければならないのだなと察した私。

高級とは聞いていたけれど、お茶の葉とお湯で別々にチャージされるとは、と圧倒されながら恐る恐る注文をしたのでした。

出てきたのは茶芸のお道具一式とお湯のたっぷり入ったケトル。

一煎目はお店の方がお道具一つひとつの使い方をレクチャーしながら丁寧に淹れてくださり、二煎目からは自分でケトルのお湯を注いだりお茶の葉をつついたりしながら飲んでくださいとのこと。

このケトルに入った「お湯」が、少し冷めるごとに店員さんがわざわざ新しいものを持ってきては取り替えてもらえるシステムだったのです。

そしてふと周りのテーブルを見てみると、一つの急須を4人でシェアしてそれぞれにお茶菓子を味わいながらお茶会を開いているマダムたちや、同じく複数人で同じ急須から淹れたお茶を囲みながらミーティングしているビジネスマンのグループがいることに気が付きます。

「あ、あのお茶とお湯は皆でいただくからあのお値段だったのか…!」と、なんだかホールケーキを独り占めして食べていたかのような、なんとも恥ずかしい気分になったのでした。と同時に、同じお茶の葉のまま、何煎もいただくのはうちの実家だけじゃなかった、と安心したのでした。

そう言えばメニューのお湯代のところに「タイムリミット4時間」と謎の一文が書かれており、何のことだろう、と思っていたのですが、周りの光景を見た時にそれも納得がいったのでした。

日本茶(煎茶)では2~3煎目までしか美味しくいただけませんが、台湾茶は上質になればなるほど何煎出しても味がしっかりしており、しかも渋みや苦みが出てきにくいおかげでこうして何時間も、しかも何人分も、1つの急須で愉しむことができるのです。

ちなみに、私のように一人でお茶をいただくことももちろん間違いではなく、私のほかにもお一人で来店して小説を読んでいらっしゃる方がいました。

日本人にとっても台湾人にとっても、お茶は一人でも・誰かとでもゆるやかに時間を過ごすことのできる素敵な存在なのだと感じた出来事でした。

台湾においても、こうしてお茶を囲んだシーンを人々が愉しんでいるように、“お茶とともに過ごすゆるやかな時間”を提案している1899の和やかな空間で、ぜひ美味しいお茶を召し上がってみてはいかがでしょうか。